続・虹の向こう側

書いて、走って、旅をする。日日是魔法日和

赤い玉を持つ男(1)

昨夜のスーパー・ブラッド・ウルフ・ムーンを見逃して、早朝の西の空に浮かぶ満月を見て思い出したお話。

 

東京で仕事をするSは日頃のストレスからか、ある日、突発性難聴になってしまった。精神的にも追い詰められたSは不思議な夢を見た。夢の中でSの身体にドカンとずっしりした赤い玉が入ってしまった。目が覚めてもその赤い玉は消えなかった。その赤い玉をずっと抱えたままの日常生活が始まった。その存在感に戸惑い、その赤い玉は何処からかやって来て何処かに返すのが自分の役目だと思うようになった。それを返せば自分の突発性難聴も精神的苦痛も救われる、と。

 

でも、何処へ。赤い玉は一体何処からやって来たのか、検討もつかない。

 

ある日、手に取った一冊のガイドブックにその答えを見つけた。ガイドブックは北カリフォルニアにあるという聖なる山シャスタを紹介する写真付きの本だった。本屋でガイドブックを見つけた時、ふとこの本に赤い玉の場所のヒントがあるかもしれない、と思い購入した。でもページをめくってもピンと来ない。ああ、ここにも答えは無かったか、とがっくり本を閉じたその瞬間、Sの目は釘付けになる。「ああ、ここだ!」夢に出て来た山の風景が、本を閉じた裏表紙に突然現れたのだ。

 

この山に何としても行かなければ、Sの悲壮なるミッションが始まった。