続・虹の向こう側

書いて、走って、旅をする。日日是魔法日和

クリスタル・スカルを探し出せ(2)

眠りに落ち始めた深夜12時近く、ドアを小さくとんとんと叩く音がした。朦朧とした頭が一瞬にして何か、非常事態を察知した。緊張した思いでドアを開けると、そこに不安そうな目をしたY美さんが立っていた。「すみません、、、ちょっと私達の部屋まで来てもらえませんか?」どうやら予想が当たり、緊急事態が起こったようだ。二人の部屋へ行くと、N子さんがベッドの上で顔を抑えててうずくまっていた。突然片目が激しく痛み出したという。もう一時間近く経ち、その痛みは更にひどくなって来た。痛みの原因が思い当たらないN子さんはその痛みを抑える為に瞑想をしてみたという。瞑想中にいくつかのメッセージがやって来た。「愛をもっと感じろ、愛をもっと伝えろ」、そのメッセージを受けて、N子さんはY美さんに愛を込めて感謝を伝えたという。そうすると、少し眼の痛みは消えた。でも、しばらくするとまた痛み出し、今度は「みさおさんにも愛を伝えろ」と心の声がする。私が部屋に入るや、「みさおさん、ありがとう、愛してます!」と真っ赤に腫らした眼に涙を浮かべながらN子さんは私に抱きついた。

 

少しづつ落ち着いたN子さんは更にチャネリングのメッセージを私に伝えて来た。「ブラックビュートがみさおさんに感謝を伝えている、みさおさんを愛しているって」。ブラックビュートはシャスタの裾野に立つ小さな山で、私にとって不思議な宇宙の司令塔のような存在だった。「この山を見ると、まるで恋人みたいな気分でドキドキときめく」と昼間、二人に語ったことを思い出した。シャスタのような不思議な山に関わり、たくさんのチャネラーという人達と出会った。チャネリングを職業としている人もたくさん見て来た。その中で、チャネリングというのは私にとって、ある種のエンターテイメントだった。占い、宇宙からのメッセージ、過去生、未来予想、当たることもあり、外れることもあり、納得できる話もあり、出まかせのような話もある。信憑性よりも、その時の一瞬の心の拠り所やお楽しみとして捉えるのが心にとって健全だと感じて来た。そんな中にも、今でも心に響くメッセージがある。それは発信者が純粋に一筋の光を伝えようとする時。自分の痛みを救う為に真夜中に愛のメッセージを伝えるというような壮絶なチャネリングは後にも先にもN子さんだけだった。今思えば、あの時のN子さんは自分の心の闇と戦う純粋な光の発信者だった。

 

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小一時間程、二人の部屋で過ごし、N子さんの眼の痛みも少し取れたようだった。「それじゃあ、部屋に戻るけど、また何かあったらすぐに呼んでね」と行って私は部屋に戻った。

 

少しまどろんだ、また再びドアがノックされるまで。

 

部屋に行くと、N子さんがまた苦しんでいた。さっきよりもっと痛みはひどくなっているようだった。さすがに、これはまずい、と緊迫した。真夜中の2時は回っていたと思う。私は泊まっているB&Bのオーナー、Sさんを呼び起こした。Sさんもご自分のチャネリングからのメッセージでシャスタに引っ越して来たチャネラーだった。SさんがN子さんにヒーリングを施す。何とかベッドに寝かしつけて、またそれぞれが部屋に戻る。

 

そして、明け方、いよいよN子さんの症状はどうにもならず、もうこれしか道はない、と、私はN子さんをシャスタの病院のエマージェンシールームへと担ぎこんだ。

 

一寸先は闇。つい数時間前、三人で笑い転げながら見上げた星空が星の灯をひとつづつ消して、夜明けと共に外を白み始めさせた。暗闇の中の光の世界から一気に放り出されて、光の中の闇の世界をひた走るが如く、私は二人を乗せてシャスタのダウンタウンまで車を走らせる。

 

シャスタ滞在最終日、明日はサンフランシスコから日本へのフライトが待っている。さあ、どうする?!ともかく今出来る最善のことをやるしかない。一体この旅はどうなるんだろう?考えている余裕もなかった。