続・虹の向こう側

書いて、走って、旅をする。日日是魔法日和

クリスタル・スカルを探し出せ(3)

早朝駆け込んだ病院はまだ患者の人影もなく、ひっそりとしていた。N子さんの病状を伝えると、すぐに部屋に呼ばれ検査が始まった。まずは眼科、しかし眼に異常は発見されず、その後、CTスキャンを受けることになった。検査の間、強い痛みを抑える為に、N子さんはモルヒネを打たれた。「ああ、大事(おおごと)になってしまったなぁ」と心の中に暗雲漂った。この時ふと、私はシャスタ在住の友人H美ちゃんを思い出した。頭では何も思考出来ないのに、勝手に手が動いて彼女に電話を入れた。H美ちゃんは夫婦で自宅を解放して、やはりシャスタでB&Bを営んでいるチャネラーだった。ロスから何気なくシャスタに家の物件を探しに来た時に、今の家を見た瞬間に、あっ、これが夢に出て来た私達の家だ、と即購入したという。シャスタに住まう人は右も左もそういう不思議な経緯でこの場所にやって来るのだ。

 

私は事の経緯をH美ちゃんに伝えて、何かに助けを求めた。「ちょっとチャネリングしてメッセージもらえないかな。。。」天にすがる思いで聞いてみた。「わかった、何か出て来たら電話するね」とH美ちゃんは言ってくれた。

 

そしてまたふと、ああ、今泊まっているB&Bからみんなの荷物を持って来なければ、と思い立った。二人は明日のフライトで日本に帰る予定なのだ。万が一病院に一泊する事になった時、明日の出発の為に荷物をまとめて置かないといけない、最善の策と最善の結果を求めて、回らない頭が勝手に回っているようだった。

 

車で往復してSさんに事情を伝え、荷物を持って病院に戻る。N子さんはベッドにぐったりと横たわっていた。CTスキャンの結果も白と出て、病院側は全くのお手上げ状態だった。モルヒネを打たれたN子さんは体も心も消耗しきっていた。ナースが私を呼んで、「もう、この病院では原因が分からず、打つ手がありません。サクラメントにある大病院で検査をしてもらう必要があります」と言う。サクラメント?!ここから車で4時間近くかかるカリフォルニアの州都だ。明日のフライトで日本に帰るという最善の道は閉ざされるのか。私はN子さんに病院の意向を伝えた。モルヒネを打たれて意識も朦朧としているN子さんが夢の中で呻いているような声で言った。「ああ、もうこれ以上モルヒネを打たれるのは絶対いや。他の病院にも絶対に行きたくない。車で何時間も移動するのはもう無理。」それは何かとても力があって、跳ね返せない強い意思の表明だった。どうやっても原因は分からないのだ。大病院に移ってまた同じ思いをして、モルヒネを打たれ続けたら、私の体はますます弱ってしまう、、。N子さんが藁をもすがる思いで選んだのは、なんとか病院を抜け出す、という大きなリスクを背負った選択だった。

 

N子さんの希望をナースに伝えた。病院側の態度は断固として大病院での検査を勧める。病院としては原因の分からない患者をそのまま返すという選択は存在しないのだろう。私にそう伝えるナースは泣いていた。「お願いだから大病院で検査を受けて」。それは医療の責務であり、病院というシステムの愛の表現なのかもしれない。 

 

行き着く先はまだ闇の中。