続・虹の向こう側

書いて、走って、旅をする。日日是魔法日和

Keep Runningの魔法

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5月のニューヨーク・ブルックリン・ハーフマラソンにエントリーした。3月にあるニューヨーク・ハーフに続いて今年2本目のレースだ。一人遊び好きなので、日々のランニングは自己完結なのがうれしい。自分の身体をフルに使って、時々六感も遊びに来てくれる。レースに出るのは走り続けることへのモチベーションとして、素晴らしい体験だから。

 

今住んでいる場所がマラソンの名門、ボストンマラソンのコースまで歩いて30分程なので、毎年観戦に行く。初めての観戦で、トップランナーの集団がドドドーッと音を立ててこちらに向かって来るのを見た時、その地響きと共にランナー達の集合エネルギーがまるで津波みたいに押し寄せて来るのに感動し鳥肌が立った。その頃はまだ走り始めていなかったので、あのエネルギーの根源は、人より少しでも速くゴールするという闘争心なのかな、と思った。

 

自分が走り始めて、その考えがちょっとシフトした。走るという行為は他者との戦いでは無く、自己との戦いだ。挑戦の目的は人より速く走ることでは無く、少しでもより良いコンディションで自分の納得のいく走りが出来ること。プロのアスリートランナーは別として、多くのアマチュアランナーにとって、きっとその目指すところは変わらないのではないかと思う。自分自身の能力に挑戦して、もう少し先に行けた時、結果が付いて来る。

 

とことん自分の身体とメンタルに向き合う、ランナーのそのストイックさが好きだ。

 

レースの醍醐味はそのストイックな集団のエネルギーと同調すること。それは、日頃のトレーニングを最高のパフォーマンスに転化してくれる。これまでのレースで、いつもまさかの自己新記録が更新されて来た。日頃の練習ですごく頑張って走った時のタイムと比べてもどうやったらあんなに速く走れたのか、と自分のレース結果に何度も驚いた。火事場の馬鹿力?みたいに、ともかく非現実的に速いのだ。

 

きっと、そのストイックに走る集団エネルギーの中で、大きな力をもらっているのだろう。

 

以前、地元近くの小さなレースに参加した時、私の横を小学校5年生くらいの男の子が、ひたすら「Keep running, keep running」と自分を励ましながら走っていた。その男の子のストイックな精神に私は痛く感動した。彼の刻む呼吸が私のリズムに重なって、私は背中を押されるように力をもらった。あの時、私は自分の能力以上に頭が真っ白になるまで走ってゴールした。

 

今でもあの男の子の声が私の背中を押し続けてくれている。

 

Keep running(走り続けろ)、それは自分を自分のヒーローに変身させる、魔法の言葉。そしてそれは隣の誰かを奮い立たせる魔法のバトンだ。

 

誰かにそのバトンを渡せたら、きっと人生は上出来だ。