続・虹の向こう側

書いて、走って、旅をする。日日是魔法日和

かつて天使だった全ての人に。

ベルリンへのマラソン遠征をきっかけに「ベルリン・天使の詩」を久しぶりに観た。今回は英語字幕版なので、二回続けてじっくりと。映画の最後に「かつて天使だった全ての人〜特に安二郎、フランソワ、アンドレイに捧ぐ」というテロップが流れる。小津安二郎を敬愛していたというヴィム・ヴェンダースの抒情感あふれる映像は何度観ても心を掴まれる。特に天使好きの人にはたまらないお宝名画だ。東西の壁が崩壊する前のベルリンの街に住む人達の心の呟きを聴き続ける構成なんだけれど、前衛ロックのライブ会場で日本人の女の子が「コンサートに来てよかったな。それにしても凄い。(パフォーマー=ニック・ケーブは)観客を全然観てない。天だけみてる」とつぶやくシーン。日本人の感性をヴィム・ヴェンダースはそんなふうに表現しているのが興味深かった。

 

もうひとつ。人間の女の子に恋をして永遠の命を捨てて人間になると決めた主人公ダミエンがついに人間になって地面に倒れていた時、空から鎧が落っこって来てダミエンの頭を打った。ダミエンは頭から流れた血を見てぺろっと舐めてみて自分が本当に人間になったことを喜んでいた。その傷の場所が先月私が体験した飛行機内での頭の傷と全く同じ場所で、思わず失笑した。空から降って来た鎧は天使から人間になったダミエンへの天からの払い下げ品?(その後、質屋に行って洋服や時計に替えてもらう)だった模様。

 

寿命ある人間に憧れて体を持って生きることを選んだダミエン。私がベルリンを走る意味もここにあるなぁ、と共時性を深く感じた。子供の心を失わず、空に憧れて、人間の肉体を味わい尽くしてこの生を終わるのが私のミッション。

 

映画を観た後は世界が違って見えた。すれ違う時、笑顔を交わす人達をきっと過去に天使だったに違いないと思える。誰も座っていない椅子を見ると、そこに天使が座っているかもしれないと思う。この世は見えないもの達と共存している魔法の空間。

 

大人の寓話。

 

もう本当に端から端まで好きな映画だ。再び出会えてよかった。

 

そして私はベルリンを走る!